はじめに

~はじめに~

特定非営利活動法人あそぼらいつ 

理事長 黒瀧 一輝

 

 

 

 

 「子どもらの本来ある力」が輝く社会をめざして、動き出した「あそぼらいつ」も子どもたちと地域の皆様に支えられ無事2年間やってくることができました。子どもたちを点で支援するだけでなく、地域全体が面となり包括的に支援できるよう、東紀州の県・市町の行政の皆様をはじめ、地域の多くの方々と協働させて頂いていることを感じる一年となりました。日ごろ、支えて頂けている皆々様に心から感謝を申し上げます。

 

 「社会的な子ども支援」とは、何かを考え、既存施策や従来の概念だけでなく、今を生きる自分たちには、何ができるのかを考え続け職員の皆様と共に子どもたちと向きあう毎日をすごしてきました。事業をするだけでなく、その中で感じる子どもたちの姿や気持ちを「あそぼらいつ」という法人を通して、社会に発信し、子どもたちが育つ環境を保障する方々と共有することまでが私たちの最低限の役割だと思っています。

 子どもたちにも、社会性のもてる育ちを求めるならば、私たち自身が、社会の一員として、自分の役割を果たすことに力を惜しむことはできません。7つの拠点で実施する13事業で活動する249名の子どもたち、それに向き合う55人の大人が過ごした一年間の活動を振り返り、新しい年度への原動力としていきたいと思っています。

 

------------------------------------------------------------------------------------

「子は親の鏡」

けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる

とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる

不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる

「かわいそうな子だ」と言って育てると、子どもは、みじめな気持ちになる

子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる

親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる

叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう

励ましてあげれば、子どもは、自信を持つようになる

広い心で接すれば、キレる子にはならない

誉めてあげれば、子どもは、明るい子に育つ

愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ

認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる

見つめてあげれば、子どもは、頑張り屋になる

分かち合うことを教えれば、子どもは、思いやりを学ぶ

親が正直であれば、子どもは、正直であることの大切さを知る

子どもに公平であれば、子どもは、正義感のある子に育つ

 やさしく、思いやりをもって育てれば、子どもは、やさしい子に育つ

守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ

和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる

©ドロシー・ロー・ノルト レイチャル・ハリス 石井 千春

------------------------------------------------------------------------------------

 

 この言葉は、この仕事を始める前にあたり、衝撃を受けたものであり、13年間の実践の中でこの言葉を胸に日々活動している毎日です。

 愛すること、誉めること、認めることなど、これらの言葉の意味をどう実践するのか、一つ一つの意味を考えながら、性格や人となりの違うたくさんの子どもたちと向き合い、毎日を過ごすなかで、いつもいつもこの言葉を思い出します。

 子どもは、今まで、体験した以上でも以下でもなく、ありのままを生きています。子どもに対して、大人が感情的に叱ったり、怒ったりすることは、ただ、その大人自身の感情でしかありません。ですが、私たち大人は、子どもたちへの期待や、子どもの未来のためなどという理由で、あたりまえのように、子どもたちへ言葉や態度で自分の想いを押し付けることが今までの子育てや教育では、多くみられたように思います。

 子どもだけでなく誰もが、自身の経験以上のことをすることには、強い勇気と自分を信じる力が必要です。生きる上で新たな経験を自分の中で整理し、習得し、淘汰すると、なにかしら新しい感情や想いが自身の中で芽生えます。それが私たちが思う「子どもたちに本来ある力」です。

 何か新しいことを自分に入れることで、変化がうまれます。その変化は、時には、今まで「できた」ことが「できない」に代わることもあります。成長とは、いろんなことを積み重ねてできることが増えていくこと、というイメージありますが、私たちは、できなくなることも成長だと思っています。

 小学校に入り、靴を揃えられなくなった。あいさつのできる回数が減った。などなど様々な現象を日々、目の当たりにします。そんなとき、子どもたちの気持ちや想い、そして、変化に気持ちをよせると、「靴を揃えられなくなった」のは「体が成長して大きな動きができるようになり、たくさんの好奇心やエネルギーが湧いてきたのでは」と思えたり、「あいさつのできる回数がへった」のは、「恥ずかしい気持ちが芽生えてきのかもしない」などと考えることもできます。

 こうした、変化を一つ一つ成長と捉え、大人として、社会的に正しいことを押し付けるだけでなく、子どもたちに気持ちの変化をすぐ近くで感じ、その変化を自分が生きてきた価値観だけでなく、その子の変化として肯定的にとらえることが子どもの力を信じ、尊重することにつながると信じています。

 たくさんの経験をし、社会を生きてきた大人には、忘れてしまった経験を子どもたちは、今この瞬間にも、たくさんしています。その一つ一つの人間としての変化を私たちは子どもと一緒に大切にしていきたいと思っています。

 

 過去は、変えられません。未来は、変えられます。ですが、今を生きる子どもたちが生きる未来は、彼らのもので、私たちのものではありません。

 

子は、親の鏡。

大人は、社会の鏡。

今の社会は、過去の社会の鏡。

 

 「人を変えるには、まず自分から」と言われますが、子どもたちに大人の想いや、「人間像」を望むなら、まずは、社会や、親、そこで生きる私たち自身が、自分を見つめ、自己肯定感を高め、互いに相互尊重のできる主体的な人格となるよう努めなければならないと思っています。

 

 

 今を生きる子どもたちの力を信じ、その力を存分に発揮できる社会基盤を目指してこれからも、地域の皆様と一緒に、歩みを進めていきたいと存じます。